消化器疾患に使用する漢方薬と漢方治療例を紹介します。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は胃で消化される途中の食物が食道に逆流することにより強い酸性の胃液で食道が炎症を起こし、胸やけや胸の痛み、嚥下障害、吐き気や膨満感など、さまざまな症状が生じる病気です。
まれに逆流性食道炎によって喘息がおこることもあります。逆流性食道炎は昔は日本人に少ない病気でしたが、食生活の変化などによって増加しています。
よく使う漢方薬
- 六君子湯
- 半夏瀉心湯
- 茯苓飲
- 黄連湯
- 二陳湯
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍と十二指腸潰瘍とは、ともに似た病気で漢方の治療では特別の区別を必要としないのでここでは一緒に述べます。
この病気は食事の不摂生で起こるばかりでなく精神の緊張、過労なども原因となります。
自覚症状として
十二指腸潰瘍では空腹時痛がよくみられ、とくに夜間にしばしば起こります。
胃潰瘍では多くの場合、食後30分から1時間たったあと、みぞおちに痛みを訴えますが全く疼痛のないこともあります。
出血は吐血(胃酸と混じるためコーヒーの残りかす様のことが多い)として現れたり、下血(タール便と呼ばれる海苔のつくだ煮様の黒っぽい便としてみられることが多い)として現れたりしますが、あまり出血のないこともあり、慢性胃炎でも出血のくることもあるため出血だけで潰瘍の診断を下すことはできません。
よく使う漢方薬
- 柴胡桂枝湯
- 四逆散
- 半夏瀉心湯
- 当帰湯
- 茯苓瀉心湯加呉茱萸牡蠣甘草
- 三黄瀉心湯
- 黄連解毒湯
- 安中散
- 四君子湯
- 小建中湯
- 甘草湯
慢性胃炎
慢性胃炎では
- 食欲減退
- 胃部の膨満感
- 厚重感
- 胃痛
- 胸やけ
- げっぷ
- 悪心
- 嘔吐
- 口臭
などがあり、ときには胃からの出血があって胃潰瘍を疑うこともあります。
また胃からの著明な症状がなく疲れやすく、体重が減少するという場合もあります。
胃炎が長期化してくると胃粘膜は次第に萎縮し胃酸や粘液を分泌しない状態になり、萎縮性胃炎と診断されます。
よく使う漢方薬
- 半夏瀉心湯
- 生姜瀉心湯
- 安中散
- 人参湯
- 四君子湯
- 六君子湯
- 大柴胡湯
- 小柴胡湯
- 柴胡桂枝湯
- 黄連解毒湯
- 茯苓飲
- 五苓散